アジアの選りすぐりの映画を紹介する「第6回 Asian Pop-Up Cinema(アジアン・ポップアップ・シネマ)」が、3月13日に開幕した。今回も、中国、香港、日本、韓国、台湾、インドから全16作品が勢ぞろい、「AMC River East 21」ほか6か所の映画館や大学構内ホールなどで、主演俳優や監督など様々なゲストを迎え、順次公開される。
3月5日には、『彼らが本気で編むときは、』(2017年日本・荻上直子監督 )を招待作品に、シーズン6のソフトオープニングが行われた。
(左から) コリン・ハラ氏( ソフィアズ・チョイス・ディレクター)、モリーン・ハーレィ氏(ソフィアズ・チョイス・ディレクター)、 マーク・シリング氏(ジャパン・タイムズ映画評論家&ゲストスピーカー)、ソフィア・ワン・ボッチオ氏、ブラウィン・プール氏(ソフィアズ・チョイス・ディレクター )
アジアン・ポップアップ・シネマ(以下「APUC」)の創設者は、エグゼクティブ・ディレクターも務めるソフィア・ワン・ボッチオ(王曉菲)さん(上写真右から二人目)「LAにもNYにも、歴史ある立派なアジア映画祭があるのに、シカゴにないのはおかしいと感じていました。シカゴは民族のダイバーシティー(多様性)あふれる町。この地を発信地として、アジア映画を通じてアジアのカルチャーをもっと深く知ってもらいたいという気持ちからこの映画祭を始めました」
香港生まれ。父は映画製作会社の製作マンで母は女優という、まさに「映画のセットの中で育った」彼女は、長年にわたり中国や香港の映画のキュレーターとして国を超えて活躍。2000年に夫と共にシカゴ郊外に移住したのをきっかけに、シカゴ国際映画祭のマネージング・ディレクターなどを歴任しながら「いつかシカゴでアジア映画の祭典を」という想いを胸に温めてきたという。
2015年、ついに念願の第1回APUCが開幕。「開幕までは苦労の連続で、多額の借金もしました。でも、この映画祭を何が何でもシカゴに根付かせなければ、という想いでした」 彼女の努力と実行力が実を結び、APUCは今ではシカゴの大切な文化イベントとして定着している。
「People’s Festival」
“ソフィアズ・チョイス(Sophia’s Choice)”というタイトルの通り、上映作品の選択は彼女の重要な仕事。アジアの映画祭には積極的に出かけ、各国のアドバイザーと連携を取りながら注目の映画にはくまなく目を通す。選択の基準は「言語や文化のバリアを超えて味わってもらえるかどうか。暴力的なもの、武道オンリーの内容は除くようにしています。せっかく足を運んでくださるのですから、お客さんがそのテーマに共感でき、満足して劇場を後にしていただけるような作品を選ぶようにしています」 主催者の“Self-Indulgent(ひとりよがり)”や“Critic(批評家)のための映画祭”になってしまわぬよう、常に“People’s Festival(観客のための映画祭)”でありたい、それが彼女の信念だ。
開催スケジュールが長いことも特徴。今回も、3月13日から5月16日までと2か月以上にも及ぶ。「短い間にやってしまうと、どうしても同じ時間に見たい映画が重なります。私はどうしてもそれを避けたかったのです。見たい映画をスケジュールの許す限り好きなだけ観ていただきたいのです」 そのうえで多くの作品を観てもらえるよう、開催は春と秋の年2回にした。「休む間もなし。だけどそれが私の使命だから」とソフィアさんは笑う。
さて、3月13日。シーズン6のオープニングを飾ったのは、日本韓国合作の『風の色』( クァク・ジェヨン監督 )。スペシャルゲストに主演の人気俳優、古川雄輝さんを迎えてのシカゴプレミア上映となった。折しも、シカゴは午後から冷たい雪が降り始め、前日にシカゴ入りした古川さんが映画と共に連れてきたかのような、ファンタジックな世界に包まれた。
当日、古川さんは朝から地元ABCテレビに急きょゲスト生出演したり、シカゴの各メディアの取材対応などハードなスケジュールをこなしたあと、6時半からレッドカーペットでファンらを出迎えた。
※当シカゴ侍でも読者の皆様からいただいた質問項目を含め、インタビューを敢行。オープニングガーラの様子も含めて、次回に詳しくご紹介します。お楽しみに。
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